Ballet Map.
コッペリアの一場面

Coppélia

コッペリア

人形に恋した青年と、機知で恋を取り戻す娘の陽気な騒動。

作曲
レオ・ドリーブ
初演
1870
構成
全3幕
上演
105

あらすじ

町の広場で窓辺の人形コッペリアを見上げる人々の水彩イラスト
第1幕

ある町の広場。

村娘スワニルダは、恋人フランツの様子がおかしいことに気づく。フランツが、人形師コッペリウスの家の窓辺にいつも座っている美しい娘コッペリアに夢中になっているらしいのだ。コッペリアは本を読むばかりで、声をかけても返事をしない。スワニルダは嫉妬と不安を募らせる。やがてコッペリウスが外出した際、家の鍵を落とす。好奇心に駆られたスワニルダは仲間の娘たちとともに、こっそりコッペリウスの家へ忍び込むことにする。一方フランツも、梯子を使ってコッペリアに会おうと窓から侵入を試みる。

人形師の工房で人形のふりをして踊るスワニルダの水彩イラスト
第2幕

コッペリウスの工房。

忍び込んだスワニルダたちは、棚にずらりと並ぶ等身大の自動人形に驚く。そしてコッペリアもまた、命のない精巧な人形にすぎないと知る。そこへコッペリウスが戻り、娘たちは逃げるが、スワニルダだけがコッペリアの衣装をまとって隠れる。続いて侵入したフランツはコッペリウスに捕まり、酒を飲まされて眠らされてしまう。コッペリウスはフランツの生命力を人形コッペリアに移し、命を吹き込もうと魔術書を広げる。コッペリアに化けたスワニルダは、人形が動き出したように振る舞い、老人をからかいながら工房を混乱に陥れ、目覚めたフランツとともに逃げ出す。

鐘の祭りで結婚を祝って踊るスワニルダとフランツの水彩イラスト
第3幕

町の祝祭の日。

新しい鐘の奉納を祝う式典が開かれ、スワニルダとフランツの仲直りと結婚も祝福される。怒って現れたコッペリウスには、領主が金貨を与えてなだめる。広場では「時の踊り」をはじめ、「祈り」「曙」「仕事」「結婚」など、さまざまな主題のディヴェルティスマン(余興の踊り)が次々に披露される。若い二人の門出を中心に、村人たちの華やかな群舞で全幕は幸福のうちに幕を閉じる。

見どころ

スワニルダの人形演技(第2幕)

本作最大の見どころ。コッペリアに変装したスワニルダが、ぎくしゃくとした人形特有の動きから、徐々に「命を得た」かのように滑らかに踊り出す。機械人形のコミカルな所作と本物の人間らしさを演じ分ける高度な演技力が要求され、バレリーナの表現力が試される名場面。

コッペリウスの喜劇的存在感

人形師コッペリウスはマイム(無言劇)中心の重要な役。自作の人形に命を吹き込もうとする偏屈な老人で、スワニルダにからかわれて翻弄される。技巧よりも演技と間で笑いを生む役どころで、ベテラン男性ダンサーが好んで演じる名物キャラクターである。

第3幕のディヴェルティスマン

祝祭の場面では「時の踊り」「曙」「祈り」など象徴的な主題の踊りが連なる。物語の進行から離れた純粋な踊りの饗宴で、ドリーブの華麗な音楽に乗せて多彩なヴァリエーションが楽しめる。主役二人のグラン・パ・ド・ドゥも見せ場となる。

ドリーブの色彩豊かな音楽

チャイコフスキーが「最も美しいバレエ音楽」と絶賛したと伝えられるほど評価が高い。「マズルカ」や「チャールダーシュ」など民族舞踊の旋律を取り入れ、踊りと密接に結びついた表情豊かなオーケストレーションが、舞台の喜劇性と祝祭感を見事に支えている。

主要登場人物

恋人人形と知らず一目惚れ変装してなりすます命を吹き込みたい二人の結婚を祝福領主スワニルダフランツコッペリア自動人形コッペリウス人形師
愛・恋家族・つながり対立・裏切り魔法・呪い
人物にふれると、その関係が浮かび上がります。※版により設定が異なる場合があります。
スワニルダのイラスト
スワニルダ
主人公の村娘。明るく機知に富み、嫉妬から人形に変装して恋人を取り戻すヒロイン
フランツのイラスト
フランツ
スワニルダの恋人の青年。人形コッペリアの美しさに心を奪われてしまう
コッペリウスのイラスト
コッペリウス
偏屈な人形師(おもちゃ職人)。自作の人形に命を吹き込もうと願う老人
コッペリアのイラスト
コッペリア
コッペリウスが作った精巧な等身大の自動人形。窓辺に座る「謎の美少女」の正体
領主(市長)のイラスト
領主(市長)
町の祝祭を取り仕切る人物。騒動を収め、二人の結婚を祝福する

有名な場面・踊り

  • スワニルダのワルツ(第1幕・麦の穂のワルツ)
  • チャールダーシュ(ハンガリー風の民族舞踊)
  • マズルカ(ポーランド風の活気ある群舞)
  • コッペリアの人形のヴァリエーション(第2幕)
  • 第3幕の「時の踊り」とグラン・パ・ド・ドゥ

初めて観る人へ

「コッペリア」は、難しい予備知識がなくても楽しめる喜劇バレエの代表作です。物語は「恋人が人形に夢中になってしまい、嫉妬した娘がその人形に化けて取り返す」というシンプルで分かりやすいもの。悲劇の多い古典バレエの中では珍しく、終始明るく笑える内容なので、初めての一本に最適です。注目ポイントは第2幕、スワニルダが人形のふりをしてカクカクと動く場面。「いつ人間に戻るか」を意識して見ると面白さが倍増します。ドリーブの軽やかで耳なじみのよい音楽も魅力で、聞き覚えのある旋律にきっと出会えるはずです。

豆知識

  • 原作はE.T.A.ホフマンの怪奇小説「砂男」。原作は人形に恋した青年が破滅する不気味な物語だが、バレエでは結末を一転させ、明るいハッピーエンドの喜劇に翻案された。
  • 初演でフランツ役は女性ダンサーが男装して演じた(トラヴェスティ)。当時のパリ・オペラ座の慣習で、男性役を女性が踊ることは珍しくなかった。
  • 初演でスワニルダを演じた16歳のジュゼッピーナ・ボッツァッキは、その後パリ包囲の混乱のなかで17歳の誕生日に病で早世し、悲劇的な逸話として語り継がれている。
  • 「コッペリア」は明るい筋立てと愛らしさから世界中で愛され、現在も多くのバレエ団が上演するレパートリーの定番。子どもの初めての観劇にも勧められる作品である。

上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。